くま75の先手必勝日記

くま75(TRI4THコピーバンド)メンバーブログです

良い演奏家とは何か

まずはこちらの動画をご覧ください。


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数々の名曲を生み出してきた伝説的ジャズ・ピアニスト、ハービー・ハンコックが、ライブでの演奏中にミスしてしまった時のエピソードを紹介しています。
即興の音楽と呼ばれるジャズだからこそのエピソードではありますが、こちらもジャズ界の巨匠マイルス・デイヴィスが機転を利かせてハービー・ハンコックのミスを見事にカバーしたのでした。
本当の意味で偉大な演奏家というのは、個人としてのスキルだけではなく、バンド全体のパフォーマンスを魅力的なものに引き上げる力のあるものなのでしょう。

5月14日、くま75は新大久保のCLUB Voiceで開催された「帰ってきたヒロウズフェフ」に出演しました。
印象的な場面はいろいろありましたが、今回は僕のミスからメンバーの偉大な演奏家の片鱗を垣間見た出来事を紹介します。

他のバンドからギタリストをゲストに迎えての「ルパン三世のテーマ」の演奏中のことでした。


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ソロ回しを終えて2コーラス目、本来ならサビに入るところを間違えて締めくくりのフレーズに入ってしまいました。
他のパートとのズレを感じて自分がミスをしたことに気付くのに時間はかかりませんでした。
その瞬間は肝が冷えました。
曲の構成を間違えるとはドラマーとして致命的なミスです。
ハッと顔を上げた瞬間に、恐らく僕自身より早くドラマーのミスに気付いていたベースのいなさんと目が合いました。
いなさんはとても穏やかな笑顔でこちらを見ていました。
その瞬間、僕の動揺は一気に消し飛び、落ち着いてサビに復帰することができました。
動画を見ると、いなさんが僕の方を向いて大きく頷いているのがわかります。
皆さんはこれが当たり前のことだと思うでしょうか。
いなさんのあの落ち着いた振る舞い、安心感に満ちた笑顔が無かったら、演奏に復帰できたにしても動揺を引きずったままのうわずった演奏になったでしょうし、その後の曲も間違いなく覇気のない演奏になっていたでしょう。
当然メンバーのミスなんて事前に予測できるものではないし、咄嗟の出来事に対して最善のフォローができるのは、彼の日頃の姿勢やこれまで培われてきた人間性があってのことでしょう。
いなさんも余裕をもって本番に臨んでいたわけではありません。
直前まで仕事がかなり忙しく練習が十分ではなかったため、演奏中に譜面をめくらずに済むよう、リハの直後に2台目の譜面台を買いに近くの楽器店を回っているほどでした。
それなのに、本番で自分の演奏をしっかりこなしながら、メンバーにも気を配って突然のトラブルにも落ち着いて対処できる。
その肝が据わった態度、度量の大きさ、めちゃくちゃカッコいいです。
ミスは無いに越したことはないですが、今回はこんなに頼りになるメンバーと一緒に演奏を楽しめているのだということに気付けたということで、とても価値のあるミスであったと思います。

日本人の美徳としてはあまり身内を褒めることはしないのでしょうけど、今回のいなさんの隠れた活躍はそれほど素晴らしいものでした。

DRマル